緊急事態宣言全面解除 でも「新しい生活様式」を継続!?

2020-05-26

5月25日、政府は緊急事態宣言を全面的に解除しました。関東の皆さんもほっと胸をなでおろされたのではないでしょうか。ところが政府は過日発表された「新しい生活様式」を今後も継続すると表明しました。

「新しい生活様式」は感染拡大の第2波を予防する目的で専門家会議が提案しましたが、経済にもたらす副作用のケアがなされていないように思います。特にソーシャルディスタンスを2m空けなければならないという点については、経済への悪影響が懸念されます。

例えば次のような事例がわかりやすいと思います。

・筋トレやヨガは自宅で動画を利用しよう

・持ち帰りやデリバリーも利用しよう

・通販も利用しよう

・冠婚葬祭では多人数での会食は避けよう。風邪をひいているなら参加しない。

このような行動指針を示されると国民としてはごもっともなことと受け入れてしまいますが、裏を返せば、これをされる事業者側からすれば、たまったもんじゃないですね。まさに国による営業妨害の何物でもないと思うのですが。

例えば結婚式での多人数の会食がダメだとなった場合、結婚式場は大きなダメージを受けます。お客側は多人数の披露宴ができないのなら、披露宴の規模を縮小するか、披露宴そのものを取りやめるかもしれません。結婚式場側は何とか披露宴をやってもらおうと、テーブルを間引いたり、広い部屋を用意したり、工夫せざるを得ません。そうなるとスケールメリットが低下し、収益性が下がります。これは別にお客が悪いわけでも結婚式場が悪いわけでもなく、「新しい生活様式」にみんなが忠実に従っただけのことです。でも結果は事業者が損をし、マクロでみれば経済が縮小していきます。

また、飲食店などが「2mのソーシャルディスタンス」を守ろうとすれば、たちまち経営の危機に直面します。お店が2mの間隔を空けるために、席数を半分にしたとします。そうすると、今までの稼働率が100%の店ならば売上高は50%減少します。稼働率が70%の店ならば売上高は30%減少します。たいていの飲食店は売上高が3割も減少すれば損益分岐点を下回り、固定費を支払えなくなり、数カ月で潰れます。「新しい生活様式」に従ったがために、一つの飲食店が廃業に追い込まれます。このようなことが続いていくともちろん経済は縮小します。

日本人は真面目でおとなしいので、国が「新しい生活様式」に協力してくださいと呼びかければ、素直に従う人が多いと思います。事業者側も「新しい生活様式」を実現するためにせっせと努力します。世間の目も気になりますし、ライバル店がやっていればお客を取られないためにやらざるを得ません。しかも自己負担でやろうとします。

穿った見方をすれば、国はうまい方法を考えたといえます。お店に休業しろと命令すれば補償の問題が発生しますが、国民に「多人数の会食はだめですよ」とか「ソーシャルディスタンスを守ろう」と呼びかけるだけで、同じ効果が得られるのです。

でもそれっておかしくないですか?国の政策に協力した事業者が馬鹿を見るなんて。本来であれば感染対策のために負担した費用や、被った損失については余すところなく国が面倒を見てあげるのが筋ですし、それが真っ当な国の姿勢ではないでしょうか。

以前にも述べましたが、例えば国が国道を通すために地主から土地を収用した場合、土地の時価相当の対価補償金を地主に支払わなければなりません。

家主が建物を取り壊すのに際して、テナントに退去してもらうときは、営業補償金や移転補償金をテナントに支払わなければなりません。

法治国家である日本では、他人の権利や利益を侵害した場合、それに見合うお金を補償するのが基本的なルールです。憲法でも民法でも保障されているのです。このような基本中の基本が、緊急事態宣言下でも、それが解除された後までも、あいまいにされているように感じます。

政府からすれば、持続化給付金や家賃補助などで十分な対策をしていると主張するかもしれませんが、問題なのは、政府が提供する補償が事業規模に見合っていないことです。小規模な店舗を1店舗だけやっている法人であれば、持続化給付金の200万円と家賃補助でカバーできるかもしれませんが、多店舗経営をしている法人や、大規模店舗を経営している法人にとって、200万円では焼け石に水です。また対象となる事業者が、その売上高が前年同月比50%減という基準も非常に厳しい基準です。30%や40%減少している法人はかなり多いですし、それらの法人はほとんどが赤字になっています。補償対象となる基準を前年同月比20%減、30%減、40%減と段階的に区分し、それに相当する補償をしてもらえれば助かる法人も多いと思います。制度は複雑になるかもしれませんが、それが公平な補償というものであり、廃業や失業を食い止めるストレートな政策だと思います。国は損害を被った事業者への救済策と景気回復のための経済対策を区別し、救済策については「損した分はそのまま補償する」というスタンスを取ってもらいたいものです。

そして、救済策だけでは日本経済の大きな落込みを回復させることは難しいでしょう。特に航空、ホテル、観光など、インバウンド関連の企業の収入は緊急事態宣言が解除されたとしてもすぐに元に戻るものではありません。海外の感染状況がどうなるかわかりませんので、今後もしばらくの間、回復できないと思われます。五輪景気も全くなくなりましたし、逆にインバウンド目当ての投資が裏目に出た分落込みも激しいです。また欧米諸国の需要の落ち込みにより輸出関連の製造業も当面厳しい状況が続くでしょうし、下請けにもかなりのしわ寄せが行くでしょう。もちろん昨年の消費税増税も重い足かせとなっています。

アメリカはすでに300兆円にも及ぶ巨額の経済対策費を計上しています。日本政府も今回の2次補正と合わせると、200兆円規模の経済対策を打ち出しましたが、融資メニューが7割で、真水の対策は限定的です。政府はコロナ対策という正当な理由があるわけですから、20年以上に及ぶ財務省主導の緊縮財政から脱却し、今こそお金を有効に使って本気で経済対策に取り組んでもらいたいです。

逆に、なにか「コロナ税」なるものが画策されているような噂を聞きましたが、「本気かよ!?」と思いました。東日本大震災の「復興特別所得税」の二の舞になることだけは、絶対に避けて欲しいです。

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