めっちゃくちゃおもろい将棋や! 藤井聡太vs渡辺明の王位戦は激熱!
先日の日曜日。盤上の静かな戦いはとてもエキサイティングだった。
第65期王位戦 七番勝負 第1局。午前九時に始まった藤井聡太王位vs渡辺明九段の二日目の対局は、先手の藤井が珍しくも千日手を選択し、80手を指し終えた時点で指直しの将棋となった。解説者によると、「渡辺の事前研究が功を奏した」ようだ。
30分後、千日手指直しの一局は藤井の持ち時間が1時間、渡辺の持ち時間が2時間20分、先後入れ替わりの渡辺先手で始まった。
前半、渡辺が順調に指し回し、100手を過ぎた頃には、渡辺の評価値は勝勢99%、渡辺ほぼ勝ちの状況。藤井の表情は曇り肩を落とす。解説者は「コンピュータが21手詰めで渡辺さんの勝ちを示してますね」とぽつり。21手詰めはプロにしたら比較的簡単な詰将棋。
しかし、渡辺快勝というムードに傾いた直後の渡辺の119手目。「3二銀」と打った手で渡辺の評価値が一気に27%に急降下。評価値を見た解説者の鈴木九段「えー!これはありえないね!」と驚きの叫び。天国から地獄とは正にこのことだ。
ただ、124手目、藤井にも「4二金打ち」というミスが出て評価値は54%対46%で渡辺やや有利に再逆転。解説者「えーっ、うそでしょ!?」。
そしてこの直後、本局最大の見どころが到来する。渡辺が指した125手目は「3三歩成り」と、歩をと金に成り返るのだが、なんと、秒読みに追われ時間ギリギリで指した駒が横向きに立ってしまったのだ。この瞬間は歩を成るのか成らないのかわからない。慌てて直す渡辺の指で盤上の駒は大暴れ…時間内に着手出来たか微妙なところ。今までこんなに動揺する渡辺を見たことが無い。
その二手後、127手目の「4二龍」がまたしても渡辺の大ミスで、評価値は10%まで下落。このミスが最終的な敗着となったが、このミスには、両対局者もさすが気付いた様子。上を向き一点を見つめる渡辺。相当悔しかったのだろう、普段なら悪あがきをしない渡辺には珍しく、解説者に言わせれば「あまり意味のない手」を指し継ぎ、なかなか負けを認めることが出来なかった。結局、藤井の136手目に無念の投了。
対局者にはお気の毒だが、われわれ将棋ファンにとっては、評価値がジェットコースターのように乱高下するめちゃくちゃ面白い将棋だった。
解説の鈴木九段曰く「勝ったと思った時が一番危ない」。勝負の世界は厳しい...