コロナ総括ーテレビ報道や政治家の「言葉」に煽られた危機感

2020-05-09

この3か月間、テレビを中心としたマスコミはさんざんコロナウイルスの危険性を報道しました。国民もその報道で相当な危機感を煽られました。正確な数字はわかりませんが、ニュースや情報番組の90%以上はコロナウイルスの情報だったのではないでしょうか。

時系列に振り返りますと、1月23日に武漢が都市封鎖され、2月初めには日本でクルーズ船の問題が発生し、その後日本やイタリアなど4カ国が全世界からつぎつぎと渡航制限をかけられ、日本では2月26日に大規模イベント開催中止、3月2日からは日本全国の学校が休校となりました。

2月の終わり頃はまだ武漢のニュースやクルーズ船の感染のニュースを見ても対岸の火事ぐらいにしか思っていなかった国民が多く、学校の休校要請に、やりすぎではないのかという意見もありました。テレビでもクルーズ船のことばかりやってましたね。

ところが、3月以降はイタリアのみならず、スペインやイギリスなどヨーロッパ諸国やついにはアメリカに到るまで全世界的なパンデミックが起こりました。そして、感染による都市封鎖が経済に大打撃を与えるとして、株も大暴落しました。3月半ばには日経平均株価が16,000円台まで暴落し、NYダウも3万円近くから1万円以上も暴落しました。世界的な株の暴落がわれわれの不安を一気に駆り立てました。

日本でも世界的なパンデミックの影響により、3月24日には東京オリンピックを延期せざるを得ない状況に追い込まれました。これを機に、マスコミも政治家もその意識が感染拡大阻止の方向に大きく傾いていったのではないでしょうか。

そのような状況下で、テレビを中心としたマスメディアは、医療崩壊したニューヨークやイタリアの医療現場の映像やヨーロッパ諸国の都市封鎖の映像を毎日毎日流し続けました。また、日本の医療現場が危機的状況にあると訴える医療関係者の映像を流し、PCR検査をいっこうに増やさない政府の対応を毎日のように批判し続けました。もちろんその映像自体は事実でしょうし、東京都の医療現場の一部がある程度ひっ迫していたことも事実だと思いますが、そのような映像を毎日毎日、何回も何回も見せられると視聴者は日本中の医療現場が医療崩壊しそうなのかと錯覚してしまいます。

都知事などが「オーバーシュート」「ロックダウン」「医療崩壊」などの過激な言葉を多用したことも国民の危機感をあおりました。また、偶然でしょうか、なぜかオリンピック延期が決まった直後から感染者数がどんどん増え始めたのですが、これも国民の不安感を増幅させました。このようにして、3月後半には「1日も早く緊急事態宣言を出して欲しい」という世論が形成されていきました。

そして4月8日、都知事からせっつかれる様な形で政府は緊急事態宣言を発令しました。専門家会議と政府は「人との接触を極力8割減らさないと、感染者数を安全なラインまで減らすことができないので、国民の皆さん1か月間協力してください」と訴えました。国民は概ね好意的に受け止めました。事業者も1カ月間であればなんとか耐え忍んで感染のピークアウトに協力するという人たちが多かったと思います。

しかしその後4月15日に専門家会議は「人と人との接触を減らすなどの対策を全く取らなかったら、85万人が重篤になり、42万人が死亡する」という試算を突然出しました。国民が自粛要請に積極的に協力していたにもかかわらずです。国民にとってはかなりインパクトのある数字で、「これって日本のこと?」と、にわかに信じがたい数字でした。これはおそらく専門家会議のスタンドプレーだと思いますが、あくまで仮定の数字を使い、こんな乱暴なやり方で世論を誘導していくんだなと思いました。

その後5月6日までの1カ月間で、国民の大半はまじめに自粛に協力し、その結果感染者数はピークアウトし、現在ほぼ安全なラインまで下がっています。医療体制を整えるための時間稼ぎは十分できたはずです。

にもかかわらず、政府はあと1か月間、緊急事態宣言を延長すると発表しました。そしてアンケートによると、国民の6割以上は緊急事態宣言の延長を支持しているようです。国民全体としてはまだ自粛ムードが継続しているということです。

 

ここで、もう一度客観的な統計をおさらいしましょう。日本と海外との感染者数や死亡者数を比較すると下記の通りとなっています。

① 感染者数  日本16,287人 ドイツ169,430人 イタリア215,858人 アメリカ1,257,023人

② 死亡者数(死亡率) 日本603人(3.7%) ドイツ7,392人(4.3%) イタリア29,958人(13.8%) アメリカ75,662人(6.0%)

③ 人口100万人当たりの死亡者数  日本4.7人  ドイツ88.5人 イタリア494.7人 アメリカ229.9人

特に100万人当たりの死亡者数を比較しますと、日本はドイツの約20分の1、イタリアの100分の1、アメリカの50分の1です。医療体制が最も整っていると言われているドイツと比較しても20分の1なのです。これは客観的な事実です。

この数値は、日本が世界で最もうまく感染症拡大の抑え込みに成功した国の一つであることを示しています。政府の対策がうまくいったからだと言っているわけではありません。日本人の体質的なものか、生活習慣なのか、BCG接種なのかその原因はわかりませんが、結果だけを見ると今の時点で日本国内の感染拡大は抑えられているのです。

欧米諸国は日本よりも、格段にひどい状態ですが、制限解除に動き始めています。日本の何十倍もの感染者や死亡者を出しているにもかかわらずです。それに比較し圧倒的に死亡者数が少ない日本が制限解除してはいけない理由があるのでしょうか?もしアメリカの感染者数が日本並みであれば、おそらくアメリカはロックダウン自体をしていないでしょうし、逆に感染拡大を抑えた優等生として自画自賛していたでしょう。

 

休業要請を解除したら、また感染が拡大していくのではないかという気持ちはもちろんわかります。しかし中小企業の経営者にとっては、この延長は死活問題です。飲食店やパチンコ店などの、お客を直接相手する業種のみならず、そこに商品を納める卸売業や製造業、そして店舗を賃貸している家主にも影響が出始めています。すでに5月分の家賃を減免してもらいたいという要求が出ています。商売はあらゆる業種が関連していますので、最前線の店舗だけの問題ではありません。対策が感染症対策に偏ると、その副作用が経済に及びます。

今後は感染症対策から、事業者への救済策、そして景気回復のための経済対策に軸足をシフトしていくべきです。特に海外からの渡航再開はまだまだ先になるでしょうから、インバウンドがほぼ皆無となりポッカリ空いた大きな穴については経済対策は必須だと思います。

ある統計では、失業率が1%上昇すれば、それを理由に自殺する人が1,800人増加すると言われています。経済が悪化しても人は死ぬのです。このまま休業要請を続けていけば失業率の上昇は2、3%どころではなくなるでしょう。そうなると5,000人以上の自殺者が出る可能性があるわけです。ちなみに今日発表されたアメリカの4月の失業率は14.7%という驚くべき数字です。前月比10ポイントの上昇です。労働市場が流動的なアメリカの失業率をそのまま日本に当てはめることはできませんが、それでも相当な影響が日本でも出る可能性があります。

安倍首相は来年の東京オリンピック開催を「人類がコロナウイルスに打ち勝った証にしよう」と宣言しましたが、今回の休業要請や学校休校で廃業したり失業したり、進路を変更せざるを得なかった人たちは、どんな気持ちで東京オリンピックを迎えるのでしょうか?そのような人たちをできるだけ作らないような政策を是非していただきたい。

コロナ感染が一息着いた今、政府には是非とも、休業要請と外出自粛を段階的に解除し、経済と、教育と、生活を元に戻し、失われた3カ月を早急に取り戻す政策に切り替えて頂きたいと思います。

 

 

 

 

 

 

 

 

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