12月, 2020年

「医師会」や「病院協会」こそ無責任ではないか?

2020-12-23

先日12月21日、日本医師会など9つの医療団体のトップがコロナ感染拡大で医療体制がひっ迫しているとして、「医療緊急事態宣言」を発表しました。

その宣言の内容は次の三つ。

国や地方自治体に、国民への啓発並びに医療現場の支援のための適切な施策を要請する

②国民の生命と健康を守るため、地域の医療及び介護提供体制を何としても守り抜く

国民の皆様に対し、引き続き徹底した感染防止対策をお願いする。

そして、日本医師会会長は「誰もが平等に医療を受けられる日本の医療制度が“風前の灯”になっている」と危機感を訴え、「国民が一丸となって真正面からコロナに向き合って」と呼び掛けました。

 

そして、その二日後12月23日に、日本医師会会長は、政府の専門家会議に対して次のように呼びかけました。

「医療現場の危機感を共有しましょう。政府に対してスピーディーで具体性のある政策を提言し、求めていきましょう。あなたたちは政府の最後の最終的な拠りどころ」と。

更に国民に対して「年末年始の我慢に加え、日本医師会としてもう一つだけお願いがある」としたうえで「病院診療所の医師、看護師をはじめ、医療従事者は自らが感染するのではないかというリスクに直面し、業務量も膨大に増えています。それこそ年末年始もありません。新型コロナの医療にかかわる医療従事者の心身の疲弊もピークを超えています。使命感で持ちこたえてきましたが、それも限界です。さらに医療従事者は誹謗中傷、差別、偏見にも苦しんでいます。医療従事者本人だけではなく、その家族も差別的な行為を受けたという報告も少なくありません」と医療従事者の実情を訴え、「どうぞ国民の皆様、医療従事者を守ってください。医療従事者が安心して医療に従事できるよう、医療従事者の家族と家庭が守られるよう応援してくださいと嘆願したのです。(ABEMA NEWS抜粋)

 

さて、みなさんは、12月21日の医療9団体トップの「医療緊急事態宣言」及び、12月23日の日本医師会会長による、専門家会議へのお呼びかけと国民への嘆願についてどうお感じになったでしょうか。

わたしは正直、医師会をはじめとした医療団体のトップが今頃になって、こういうことを言っているからこそ、日本の医療体制がひっ迫したんだなと思いました。ここに並べられた言葉に医療のプロとしての専門的な示唆や使命感があるでしょうか。ここには誰かに対するお願いの言葉しかありません。

特に気になった言葉が下記のような発言です。

「国や自治体に医療現場への支援を要請する」→これは逆ではないでしょうか。医療崩壊が起こっている原因は、自治体から医療機関にコロナ患者の受け入れを要請してもほとんどが断られているからであり、支援をしてもらいたいのは自治体の方です。医師会等の役割は、自治体から医療機関に協力要請があった場合に、スムーズに協力できる体制作りのための提案をすることではないでしょうか。

「国民の皆様に徹底した感染防止対策をお願いする」、「国民が一丸となって真正面からコロナに向きあって」→すでに国民は皆協力していて、医師会等から再三されるお願いに辟易しています。われわれ国民こそ医師会等にお願いしたいのです。われわれが求めているのは医療サイドこそ、コロナ病床を増やすための具体的対応をしてもらいたい、ただそれだけのことです。

「危機感を共有しましょう。政府に対してスピーディーで具体性のある政策を提言し、求めていきましょう。専門家会議は政府の最後の最終的な拠りどころ」→今頃専門家会議と危機感を共有しましょうって遅すぎないでしょうか?また専門家会議が政府の最後のよりどころって、医師会等には医療のプロとしての当事者意識が無いのでしょうか。医療現場に最も近い医師会等こそが医療ひっ迫が起きている医療現場の問題点を検証し解決策を見つけていくべき立場ではないのでしょうか。

「どうぞ国民の皆様、医療従事者を守ってください。医療従事者が安心して医療に従事できるよう、医療従事者の家族と家庭が守られるよう応援してください」→ 過重労働や風評被害など、一部の医師や看護師にコロナ対応の負担が偏っているのは医師会等に所属する大半の医療機関が非協力的だからではないのでしょうか。また、医師会等こそが、コロナ対応をしている医師や看護師の過重労働の改善やインセンティブの確保を担うべき立場であるにもかかわらず、それを放置したまま、国民に対して「医療従事者を守ってください」というのはお門違いではないでしょうか。

 

医師会の会長がなぜこのようなお願いばかりの発言に終始しているのかといえば、これら医師会等のそもそもの目的が所属する医療機関を守ることだからです。医療9団体とは、日本医師会、日本歯科医師会、日本薬剤師会、日本看護協会、日本法人医療協会、日本精神科病院協会、日本病院会、全日本病院協会、そして東京都医師会です。

これらの団体のほとんどは民間の病院や開業医の団体です。いわゆる「民間の病院や開業医」の「経営や待遇」をよくするための職能団体です。しかも加入義務が無い任意団体です。よって、医師会会長らの発言は、コロナ禍の中でいかに医師会等に所属する医療機関を守ることができるか、特に病院経営上の被害を少なくすることができるかという目的で発せられているのです。

こういう視点に立てば、医師会の会長がなぜ執拗に「医療体制のひっ迫」を訴え、国民に自粛を要請しているのかよくわかります。その本当の目的は、陽性者数が拡大し、医療体制のひっ迫を公的病院でカバーしきれなくなった場合に、自分のところにお鉢が回ってくることを避けたいからです。なぜ避けたいかといえば、ご承知の通り、コロナ患者を受け入れる場合の医療体制の負担の大きさと、コロナ患者を受け入れることで経営が悪化するからです。特に4月にコロナ患者を受け入れた病院が軒並み経営悪化に陥ったことが原因でしょう。医師会等は所属している医療機関の利益を第一に考えますので、どれだけ医療がひっ迫していても、積極的に協力しようとはしないのです。これだけ「自粛、自粛」と再三繰り返すのは、国民の命を救うためというよりも自分たちの立場を守るためといっても過言ではないでしょう。

結局、陽性者数が欧米に比べ圧倒的に少なくかつ医療資源が十分にある日本の医療体制がひっ迫している原因は、日本の医療資源の8割を占める民間の医療機関が協力をしないからだと言えます。

それにしても、このようなことをいつまで放置しているのでしょうか?民間の医療機関もその収入の7割が公費であることを考えれば、民間と言えども公共的な役割があるわけで、今のような緊急時には、積極的に国や自治体に協力すべきではないでしょうか。そして政府や厚労省も手を拱いていないで、もっと積極的に医師会等に働きかけ協力を求めていくべきですし、医療機関が協力しやすい体制に制度設計すべきです。特に、協力する民間の医療機関に対しては、その経営が傾かないような支援をし、政府、厚労省、自治体、医師会等が一体となって医療崩壊を防ぐ努力をすべきです。

もし、4月の緊急事態宣言が収束した後、医師会をはじめとした医療団体のトップが医療体制の拡充に積極的に動いていたら、飲食店の時短営業をする必要もなかったし、Gotoキャンペーンを中断することも無かったでしょう。日本経済がここまで疲弊することは無かったはずです。

医師会をはじめたとした医療団体の皆さんには、「医療ひっ迫状況」を招いた原因が自らにも有ることを自覚し、医師本来の役割を思い出し、医療体制ひっ迫の解消のために具体的に行動してもらいたいものです。医療体制さえ充実していれば、「コロナで亡くなる命」も、「廃業や失業で失われる命」も、両方の命を救えるのですから。

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