7月, 2023年

何だ、この映画は!?「RRR」を観てきました!

2023-07-11

(ネタバレにご注意ください)

先日、遅ればせながら、インド映画「RRR」を観てきました。とにかく、とにかく凄かったです!!  上映時間は3時間もあるのですが、最初から最後まで全く飽きることなく、スクリーンに釘付けでした。

特に冒頭、主人公の一人、ラーマが、何千人もの群衆の中に独り飛び込んで暴徒の首謀者を追い詰めるシーンの迫力はえげつなく、ラーマという主人公の人間離れした不死身さに圧倒され、このシーンで一気に「RRR」の世界観に引き込まれました。

それ以降も、ド迫力なアクションシーンの連続で、まったく息つく暇もありません。ただ、「RRR」を観て強く印象に残った点は、アクションシーンの凄さだけでなく、インド映画特有の歌やダンスのシーンが随所に散りばめられ、今まで観たどのアクション映画とも違う世界観を持っていたことです。そして、この独特の世界観を纏ったド派手なアクションシーンが、3時間にも渡り怒涛の如く押し寄せてくるので、脳と心臓のどきどきが止まらず、観終わった時には得も知れぬ高揚感に包まれるのです。とにかく「凄い!」としか言いようが無く、まさに、「何だ!この映画は!?」なのです。

実は、私が「RRR」を観ようと思ったきっかけは、「RRR」が来年、宝塚歌劇団・星組の演目に採用されることが決まったからです。ただ、噂では「RRR」が、とんでもないアクション映画だと聞いていたので、「えっ!本当に宝塚で舞台化できるの?」と俄かには信じられませんでした。だから、宝塚首脳陣が「RRR」のどこに興味を持って、何の目的で採用したのかを、「RRR」を実際に観て確かめたかったのです。

そして、観終わった上で、私なりに勝手に推測した、「RRR」の採用理由は次の三つです。

一つ目は、来年が宝塚歌劇110周年にあたるので、話題性のある作品をやりたかった。

二つ目は、アカデミー賞・歌曲賞にも輝いた「ナートゥダンス」を宝塚屈指のダンサー、礼真琴と暁千星が在籍する今の星組でやりたかった。

三つ目は、友情、使命、愛という「RRR」のテーマが宝塚歌劇にぴったりだから。

確かに「RRR」の構造自体が「宝塚的」で、ダンスシーンや歌い上げるシーンが多く、エンドロールでは宝塚と同じくフィナーレダンスまで付いています。このフィナーレダンスは宝塚歌劇に特徴的な演出手法の一つで、芝居の内容が喜劇であろうが悲劇であろうが、その出来が良かろうが悪かろうが、最後に出演者全員が芝居とは一線を画して歌い踊ることで、観客を一種独特の幸福感に導く効果があるのです。悲劇なら観客の悲しみをクールダウンさせ、ハッピーエンドのお話なら観客の幸福感をより一層膨らませてあげるといった具合です。喩えるなら、フルコースの最後に出てくるデザートのようなもの。「RRR」のフィナーレダンスにもこの宝塚のフィナーレダンスと同じ効果があるのではないでしょうか。

また、「RRR」は「虐げられる者たちの怒り」や「友情と使命のどちらを選ぶべきかの葛藤」をテーマにした勧善懲悪の物語で感情移入しやすく、ラストシーンへ向けての「カタルシス」が醍醐味の映画ですが、「宝塚歌劇」もまた「身分や立場の違いによって生じる試練を乗り越えようとする男女の愛」がテーマの悲恋物や恋愛成就型の「カタルシス」を味わえる作品が多いのが特徴で、「RRR」と「宝塚歌劇」は、その扱うテーマの面でも類似性が高いのかもしれません。

宝塚がどのようなシステムで上演作品を選定するかは全くわかりませんが、一つ言えることは、作品選定の担当者がこの「RRR」という映画の持つ圧倒的なパワーとその普遍的なテーマに感情を揺さぶられ、心を動かされたことだけは間違いないでしょう。

ただし、「RRR」がどれだけ話題性があり、宝塚との類似性が高く、宝塚での舞台化が魅力的だからと言って、「RRR」で展開されるアクションシーンを宝塚の舞台で再現できるかどうかはまた別の問題です。印象に残っているどのシーンを取っても生の舞台で再現するのは難しそうなものばかりです。例えば、「映画の冒頭、ラーマが何千人もの群衆の中にたった一人で飛び込んで首謀者を捕まえる格闘シーン」、「ビームが猛獣を捕獲しようとして獰猛な虎と対峙するシーン」、「鉄橋の火災事故で炎の渦に巻き込まれる少年をビームとラーマがロープにぶら下がって救出するシーン」、更に「トラック一杯に猛獣を詰め込みイギリス総督府を襲撃するシーン」など、数え上げたらきりがないのですが、スクリーンから伝わるこれらシーンの物凄い迫力は、VFXやワイヤーアクションなどの特殊効果、さらにはダイナミックなカメラワークや編集技術など、舞台では採用し難い、映画ならではのテクニックの賜物だからです。

そして、これらのアクションシーンがあるからこその「RRR」とも言えるわけで、このアクションシーンをバッサリ省略してしまっては、もう「RRR」ではありません。「神は細部に宿る」と言われますが、アクションシーンのひとつひとつが「RRR」の独特の世界観を形成していて、それこそがこの映画の感動の核心であり、それが損なわれてしまっては、「RRR」を宝塚の演目に選んだ甲斐がありません。

果たして、宝塚のスタッフはどんな手を使って、「RRR」の世界観を維持しつつも、この大スペクタクル・アクション映画を宝塚の舞台に合わせ再構築していくのでしょうか。

とにかく、「RRR」の舞台化については興味が尽きませんが、宝塚歌劇にご興味ない方も、「RRR」自体はめちゃくちゃ面白い映画なので、是非一度、映画館で観てください。そして、その勢いで、宝塚歌劇にも興味を持ってくれたら嬉しい限りです。

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