12月, 2023年
今年の漢字は「税」。大谷翔平1000億円の契約と「税」について
今年の漢字は意外にも「税」に決まりました。インボイス制度の導入やふるさと納税のルールの厳格化、わずか4万円の減税に過ぎないのに手続きが複雑すぎる定額減税の導入や防衛費増税など、税にまつわる鬱陶しい話題が多かった為でしょうが、でもやはり、「税」が選ばれた一番の理由は「増税メガネ」と揶揄される誰かさんの所為でしょうね。
そんな重税感に覆われた不景気な日本経済を横目に、大谷翔平は10年1000億円の北米プロスポーツ史上最高額の契約を果たしました。1000億円の金額については何となく予想できましたが、総額1000億円のうち97%の970億円を10年後からの後払いにするという異例の契約には驚きました。しかもその提案は大谷から出されたようで、目的はドジャースの選手補強のための資金的余力を残すためだということ。大谷はそれほどまでして優勝がしたいんでしょうね。
ところで、この後払いについては賛否両論ありますが、「大谷は節税のために後払いにしているのじゃないか」という批判がちらほら見られます。現役時代は州税の高いカリフォルニア州でもらう報酬額を抑え、退団後は州税の安い州に転居し、州税を節税しようというものです。しかし、この批判は的を射たものではありません。州税だけを見れば節税できますが、トータルの手取額は後払いより、現役時代に毎年100億円ずつ貰う方がかなりお得です。
では、どのぐらいお得なのか、「税」と「利息」に着目して確かめたいと思います。
なお、前提条件は次の通りです。税率は最初の10年間はカリフォルニア州の州税13.3%を含め55%、退団後の10年間は州税が0%の州に転居し41.7%。金利は年利5%の1年複利で計算をします(なお、利息に対する税金は今回無視します)。
1.まず、今回大谷が締結した後払いの契約を見てみましょう。
現役10年間では毎年3億円の報酬、ドジャース退団後の11年目からの10年間で残り970億円を、毎年97億円ずつ貰うスキームです。
この場合、最初の10年間でもらう税引後の報酬は13.5億円、利息は4.5億円、合計18億円となります。
その後、11年目から10年間でもらう税引後の報酬は565.5億円、利息は192.5億円、合計758億円となります。
20年間のトータルは、税引後の報酬は579億円、利息は197億円、合計で776億円になります。
2.次に、現役1年目から報酬を100億円ずつ貰う場合です。
現役10年間で毎年100億円ずつ報酬をもらい、総額1000億円を現役10年間で貰い切るスキームです。
この場合、最初の10年間でもらう税引後の報酬は450億円、利息は144億円、合計594億円となります。
その後、11年目から10年間でもらう税引後の報酬は0円、利息は374億円、合計374億円となります。
20年間のトータルは、税引後の報酬は450億円、利息は518億円、合計968億円になります。
968億円-776億円=192億円。 その差192億円!
後払いの方は州税の節税が129億円できますが、現役1年目から100億円ずつもらった方が20年間の利息が321億円も多くなりますので、現役1年目から普通に100億円ずつもらう方が、20年間での手取額は192億円もお得になるわけです。
よって、大谷は後払いにしたからと言って決して得しているわけではありません。こんな計算は代理人が計算済みだと思いますが、192億円を損してでもワールドシリーズ優勝を優先した大谷は、やはり規格外だなと思いました。
今年の漢字は「税」ですが、大谷にとって「節税」とか「利息」なんて下世話な話はあまり関心がないのでしょうね。