相続税申告の落とし穴

2015-11-17

相続税法の改正により平成27年1月より基礎控除額が今までの6割に減額されました。この改正で、相続税を申告しなければならない納税者の対象が拡がりましたので、今まで相続税の申告は関係ないと思っていた方も他人事ではなくなりました。

例えば相続人が妻、長男、次男の3人ですと、今までの基礎控除額は8,000万円(5,000万円+1,000万円×3人)でしたが、改正後の基礎控除額は4,800万円(3,000万円+600万円×3人)です。

4,800万円ですと、自宅不動産、預貯金、生命保険などを足すと、軽く超えてしまう方が多いのではないでしょうか。

自宅の土地が2,500万円、建物が1,500万円、預貯金が1,000万円、生命保険が3,000万円とすれば合計8,000万円ですので、基礎控除額4,800万円を3,200万円も上回ります。これだと相続税が4~500万円ぐらいかかってくるのではと懸念される方がおられるかもしれません。

ところが実際は、生命保険金の非課税額が1,500万円(500万円×相続人3人)、自宅の評価減が2,000万円(小規模宅地の評価減がまるまるできるとして)できますので、相続財産額は4,500万円(8,000万円-1,500万円-2,000万円)となり、基礎控除額4,800万円の範囲内ですので、相続税額は0円となります。

また、相続財産額が基礎控除額を上回っていたとしても、妻がすべて相続すれば、配偶者の税額軽減の規定(1億6千万円迄)がありますので、この場合も相続税額は0円となります。

では、この様に事前に計算して、基礎控除の範囲内だから相続税は関係ないと、そのままほったらかしにしておいてもよいでしょうか?

実は、自宅土地の評価を下げる「小規模宅地の評価減」の規定は、申告期限内に遺産分割することが要件となっています。申告期限は死亡日から10か月以内です。それ以降に気付いて遺産分割しても小規模宅地の評価減は適用できません。

もし、上の例で、相続税がかからないからと言って遺産分割も申告もせず、申告期限を過ぎてからすべての財産を長男と次男に相続してしまえば、配偶者の税額軽減も適用できませんので、170万円の相続税と無申告加算税が課税されることになります。

相続税法の税額軽減規定には、遺産分割が要件となっているものが多いので、注意が必要です。

また、住宅ローンが残っているので、相続税は心配ないと思ってらっしゃる方も、団信保険に加入している場合借入金がなくなりますので、注意してください。

また逆に、財産より借金が多い場合には思ってもみなかった借金を背負うことになりかねません。借金を相続しないようにするには相続放棄という方法がありますが、相続放棄は死亡日から3カ月以内に手続きをする必要があります。葬儀や四十九日法要などでバタバタしていると気付けば3カ月が過ぎていたということは良くあります。

身内が亡くなった場合、いろんなケースが想定されますので、財産の多寡にかかわらず、できるだけ早く税理士に相談されるのが良いと思います。

 

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