今年の漢字は「税」に決まりました!

2014-12-13

今年もあとわずかとなり、毎年恒例の「今年の漢字」が決まりました。日本漢字能力検定協会の発表によると今年の漢字は「税」だそうです。消費税の増税など税に関する関心が高まった一年でしたね。

わたしも税理士として「税」には大変お世話になっていますので、今年の漢字にちなみ、「税理士」の果たすべき役割について基本に戻って考えてみました。

税理士法第1条には「税理士は税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」と明記されており、まさに税理士業務の基本が謳われています。

税理士はその出自をたどれば、明治時代の「税務代弁業」から始まり、税務署の補助機関である「税務代理士」を経て、現在の税理士へと発展してきたのであり、もともとは国の税務行政を補助する立場、いわゆる国の出先機関的な立場でした。

このような経緯から考えると、税理士の使命はまさに「納税義務の適正な実現」であり、それ以上でも以下でもありません。

ただし、税理士制度が現在の形に発展していく過程で、税理士の立場はより専門性と独立性及び公正性をそなえるべき立場に進化してきました。

税理士法第1条をもう少し噛み砕いて見ると、納税義務の適正な実現を図るためには、税理士は次の条件を満たさなければならないと言っています。

1.税理士は税務の専門家でなければならない

2.税理士は独立した公正な立場でなければならない

3.税理士は申告納税制度の理念に沿わなければならない

4.税理士は納税義務者の信頼に応えなければならない

5.税理士は租税に関する法令を遵守しなければならない

つまり、税理士は当然、税務の専門家であらねばならず、税法を熟知していなければならない。税務署が法人部門や個人部門などに細分化されているのに対し、税理士はあらゆる税法に精通し、様々な問題に対処していかなければならない。

また、その立場はあらゆる誘惑や圧力から独立していなければならず、かつその判断は公正でなければならない。納税者にも税務署にも与せず、自己の良心に従って常に客観的な判断を下さなければならないのです。

さらに日本の税制の根幹である申告納税制度を維持していく立場でもあります。国から一方的に課税される賦課課税制度ではなく納税者自らが自主的に申告する申告納税制度を維持していくことは、「義務」である納税を「権利」として高次に保持することなのです。国民の納税意識の極端な低下は、申告納税制度という権利を自ら放棄することに等しい。申告納税制度の重要性を国民に理解してもらうためにも税理士は租税教育の一端を担っていくべきです。

制度としては、税理士は国からの要請で存在していますが、一方、税理士が職業として成立するためには納税者から報酬を得る必要があります。国からは一円も支給されません。よって、納税者の信頼に応えられるかどうかは、税理士にとって死活問題です。

ただし、報酬を得ている手前、納税者の立場になり過ぎるきらいがあります。納税者のためにという気持ちが強よ過ぎると税法を逸脱しかねません。節税指導はよいが脱税指南になってはいけない。税法を逸脱して納税者にアドバイスすれば、結局、納税者にも痛いしっぺ返しがかえってくることを肝に銘じなければなりません。

税理士業務にはコンサルタント的な様々な業務が付随しており、納税者のニーズは申告業務にとどまりません。もちろんそういったニーズに応えていくことは必要ですが、いろんなサービスに手を広げすぎ肝心の税務会計業務がおろそかになっては本末転倒です。

今後も、税理士法第1条に書かれた税理士の使命を肝に据え、税理士として恥ずかしくない言動を心掛けていきたいと思います。

みなさんも、明日が総選挙の投票日でもありますし、「税」についてじっくり考えてみてはいかがですか。

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